3年ぶりでようやく実現に漕ぎ着けた演奏会に選んだカンタータは、素晴らしい名曲が並ぶ充実したプログラムとなりました。会場の教会は100余りの客席しか確保できないため、チケットの一般販売は残念ながら断念し、団員経由での限定販売となります。
オーケストラ・メンバーのプロフィール紹介です。今回は多くの新たな方々との共演、楽しみです。
そして、チケットをゲットしたラッキーな方々に、少しだけ予備知識の曲目紹介を手短に。
カンタータ第38番『深き淵から、あなたを呼びます』
冒頭の合唱は詩篇130から、古様式のフリギア調コラール旋律をまずテノールが歌い始め、それをアルト、バスが引き継ぐ模倣対位法を展開し、最後にソプラノが全音符に拡大したコラールを重ねる。「深い苦悩の中で」なお神の恵みを切望する、重く美しい曲だ。
それに輪をかけたように美しいのがふたつのアリアで、併走するオーボエが印象的なテノールのアリアでは、「苦悩の中で私はイエスの慰めの声を聞いた」と繰り返す、あくまで前向きな雰囲気が心地よい。もう1曲はアリアと言っても、ソプラノ、アルト、バスの三重唱Terzettoで、苦難と悲しみの夜の後には信仰の朝が訪れると歌い、通奏低音の推進力がそれを支える。その最後の最低音Dをバスが受け、その上で風景を一変させる四六の和音で終曲コラールが始まる。
カンタータ第182番『天の王よ、あなたを歓迎します』
この曲は今回の演目では、多分一番よく知られているカンタータで、リコーダーが活躍し、楽しさ溢れる作品。
テノールが導入を受け持つ7曲目のコラールも名曲だと思います。
カンタータ第96番『主キリスト、永遠の御父の独り子よ』
第1曲のコラール・ファンタジアではイエスの誕生に心沸く期待感を三拍子ダンスの付点リズムで歌う。コラールは、実はルターの『讃美歌集』Gesangebuchの冒頭を飾る曲で、ここではアルトが長く引き延ばして歌う。目を見張るのは高音で曲芸業のようなソプラニーノ・リコーダー、まさに天上に輝く明けの明星を彷彿とさせる明るさだ。
カンタータ第102番『主よ、御目は真実を求めて』
歌詞の出典はマイニンゲン宮廷に献じられた台本。必ず聖書からふたつの引用をテーマとすることが特徴で、作曲技法的にもより多才さを増すバッハです。とりわけ第1楽章では、「あなたが彼らを打っても、彼らは何も感じません。彼らを苦しめても、改心しません。」のフレーズで、”Du schlägest sie, du plagest sie”に休止符やスタッカートを加えて強いインパクトを残します。アルフレート・デュルによれば「バッハ円熟期の最高傑作のひとつ」、名曲だなあと実感しつつも、歌う側には過酷な曲で、歌い終わると精根尽きる思いです。
報告が遅れましたが、8月演奏会形式の締め括り練習は築地教会で無事終了し、今は新曲に取り組み始めました。歌うほどに名曲だなあと感じ、青木先生の気合いも充分の102番《主よ、汝の眼は信ずる者を見守り》 – 男声陣には課題のソロ曲も控え - を手始めに、38番《深き悩みの淵より》、96番《主キリスト、神の独り子》に挑戦することになりました。モテット《主を讃えよ》Lobet der Herrn BWV230も練習の気分転換用に用意しています。演奏会日程は決めていませんが、これから煮詰めていきます。2023年秋か年明け後のどこかを目指したいところです。一部メンバーの補充も考える必要があるかも知れません。
「プロムス恒例の千秋楽フィナーレ、会場全体が合唱して盛り上がるRule Britanniaは、コロナだけでなく植民地主義の象徴という背景をBLMへの忖度から今年[2020]は自粛か」とGuardian紙。自粛と言うからにはコンサート自体は強行するのかと思ったら、どうも無観客公演らしい。それじゃ全体合唱やろうにもやれないんじゃないの?
https://www.theguardian.com/music/2020/aug/23/bbc-considers-dropping-rule-britannia-from-last-night-of-the-proms?CMP=Share_iOSApp_Other
という2年前の他国の風景が未だに我々の足元にもあって、セタQではこれまで4/150/182番のカンタータ練習を粛々と(?)続けてきましたが、演奏会のメドは2年越しで立たず、流石にこのままというわけには行かないだろうと、全員で議論した結果、これらの曲を今夏までには通し練習の形で締め括りにして次のステップに進もうということになりました。新たなステージで何を歌うかは目下相談中ですが、182番は初挑戦だったので次回に持ち越しするつもりです(4/150番は第1回で演奏)。
本日は復活祭、第4番『Christ lag in Todesbanden』から、Versus 4の録音(指揮者なしの自主練習)を皆様にお聴かせします。
遠からず皆様と演奏会でお目にかかれることを期待しつつ!
➡画像をclick & HAPPY EASTER !
新型コロナは我々の活動にも大きな影響を及ぼしました。
今年3月には演奏会を予定していた25番、66番などが、昨年春の1回目の緊急事態宣言と共に完全に活動停止となり、その後秋になってようやく練習を再開するにあたって、具体的に演奏会を想定した場合、演奏者間の距離やお客様との距離の確保を考えると演目も検討し直して、器楽編成がなるべく小さいカンタータに取り組むのが妥当だろうとの方針を確認しました。その結果、メンバーが合意したのがカンタータ4番、150番、182番で、欲張らず3曲に絞って取り組むことになりました。
4番と150番は第1回演奏会で既に取り上げた作品ですが、今回の選曲の方向性と曲自体の魅力から自ずと選ばれることになった作品です。150番は2 x
Vnと通奏低音のみ、4番も弦楽のみ(金管は任意追加)という編成です。ここで出発点に回帰するという意識は特になく、当時はいなかった新たなメンバーも各パートにいますし、2015年以降の我々の成長を測る作品と言えるかも知れません。
182番は復活祭一週間前、イエスがエルサレムに入城したことを記念する棕櫚の日曜日の礼拝のためのカンタータとして有名な部類の曲で、演奏するのも聴くのも楽しい、明るい曲想のなかに信仰の根本が込められていますが、比較的小規模の私達がどのようにまとめられるか探っていきたいと考えています。4番はすべての曲がコラール旋律をもとに構成され、さまざまな変奏が試みられており難しい曲です。前回はやや短い準備期間のなかで夢中で取り組みましたが、今回は音楽的に整えるとともに、テキストの言葉と内容がより表されるような表現方法を試みています。復活祭第1日の礼拝用の曲であり、もっとも重要な礼拝のためのカンタータです。また困難な時期をのりこえて再出発となる演奏会にふさわしいとの思いもあります。150番はバッハが教会カンタータに取り組んだ最初期の作品で、高度なハーモニーが美しい合唱が中心となるところが多い一方、器楽の各パートも含め各声部のアンサンブルによってリズミカルな舞曲を奏でる箇所もあり、バッハの筆の運びを楽しみながら、それぞれの表現を磨きたいと思います。
これらの練習は禁足令の合間を縫って青木先生の指導も含め始まっておりますが、演奏会の日程などは現在のところ未定です。できるだけ早い時期に皆様と再会できることを期待しつつ、練習に励みます。
添付画像は150番に関連する蘊蓄のひとつ、おまけです。
次回演奏会につきましては、第5回演奏会のプログラムの末尾に、2021年3月6日を予定していると記していますが、
新型コロナウィルスの影響を考慮し、大変残念ながらひとまず見送ることといたしました。
新たな予定が決まりましたら、改めてご案内申し上げます。
アンケート回収した中から、皆様のご意見・ご感想をいくつかご紹介させていただきます。
* * *
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ご協力有り難うございました。さらにご意見など、Q?[contact]のページからお気軽にお寄せ下さい。
1月13日の第5回演奏会は無事終了しました。
セタガヤ・クォドリベッドは元々ワイマールなど初期のカンタータを歌おうと集まったグループでしたが、
名曲とされる作品もいろいろ歌い終えて、徐々に中期・後期のバッハ作品を扱う比重が増えつつあります。
今回のハードルの高いプログラムをどうにかこなすことができたのは、多くの皆様の温かいご支援、
青木洋也先生のご指導、そしてオーケストラの強力なサポートのお陰と感謝しております。
今回の入場者数は新記録かも知れないほどの盛況で、ご来場いただいた皆様には快適な空間とは行かない
会場の混雑ぶりでしたが、この合唱団の長期的成長という観点では大きなステップとなったのではないかと
思います。
次回のプログラムはまだ未定ですが、生で聴くと興味深く楽しいカンタータなども積極的に掘り起こそうと
議論中です。どうぞご期待下さい!
写真は46番バスのアリアの最終練習風景です
2020年1月の第5回演奏会のチラシです。
バッハがライプツィヒ聖トーマス教会のカントールになる前後のカンタータを中心に4曲、
そしてモテットも1曲加えた充実のプログラムで臨みます。どうぞご期待下さい!
演目の概説は下記に。そしてチケットは Q?[contact] のページからお申し込みを。
2019-11-18:
第5回演奏会に向けて、トランペットの斎藤さん、リコーダーの高橋さん・本多さんのご紹介として、皆様のプロフィールを管楽奏者のページに追加させていただきました。ホーム[home]画面の「管楽奏者」タブからご覧下さい。
Du wahrer Gott und Davids Sohn
カンタータ23番《あなたは真の神にしてダビデの子》
バッハがトーマス教会のカントールになるために採用試験として1723年に演奏したのがこの23番と22番のカンタータです。エルサレムに向かう道中、ジェリコの近くで2人の男が「ダビデの子よ、憐れんでください」とイエスに助けを求め、盲目を治してもらう逸話(マタイ伝9:27)に絡めて、奇蹟を讃えるカンタータとなっています。
この作品がライプツィヒの評議員を満足させたのはもちろんですが、実はバッハはカントールの最優先候補ではなく、他候補の辞退もあって道が開けたようです。
第4曲のコラール"Christe, du Lamm Gottes"はミサ曲の締め括りAgnus Deiと同様に、"Dona nobis pacem"をドイツ語で歌います。このコラールは試験本番に向けてあとから追加されたもので、ヨハネ受難曲第2稿の終曲にも使われていることから、バッハにとっては「ここぞという時の決めのコラール」なのでしょうか。(2019/7/20)
Schauet doch und sehet ob irgendein Schmerz sei
カンタータ46番《目を凝らしそして見よ、かつてこれほどの痛みが》
哀歌1:12のテキストからエルサレム陥落の物語を題材とする46番は充実感のある素晴らしいカンタータです。
冒頭の合唱は聞き覚えのある旋律で、まさにロ短調ミサ曲のQui Tollisの元歌です。バスとアルトそれぞれのアリアが一層輪をかけて見事で、青木先生も「実は一番好きな曲」のようですから乞うご期待。但しあのGardinerですら、「このカンタータを歌った後は精根尽きる気分」と漏らすほどですから、難曲です。 (2019/8/15)
Die Elenden sollen essen
カンタータ75番《貧しい者は食べて満たされ》
採用試験に合格して、ライプツィヒでの初仕事として演奏したのがこの75番です。
教会暦が始まる三位一体節礼拝での説教を間に挟んで全14曲[B+A+C+Hのシンボル数]、明らかにこの曲に賭けたバッハの意気込みが感じられるカンタータです。
荘厳なフランス風序曲が始まると哀感あふれる合唱に引き継がれ、4曲のアリアはTのポロネーズ、Sのメヌエット、Aのパスピエ、Bのジーグと多彩です。
題材は詩篇22:26「貧しき者は喰らいて満たされ、主を尋ね求める者は主を褒め讃えん」から取られています。詩篇22はメシア詩篇とも呼ばれ、キリストの十字架預言と重なる内容が多い、最も有名な詩篇とか。(2018/8/02)
Der Herr denket an uns
カンタータ196番《主はわたしたちのことを思われ》
バッハとマリア・バルバラが結婚式を挙げたドルンハイム村の小さなTraukirche教会[写真]。そこで6ヶ月後に親友シュタウバーの結婚式が行われることになり、バッハはカンタータの新曲をプレゼントしようと考えた。これが196番にまつわる逸話ですが、真偽のほどは明らかではありません。
弦楽のシンフォニアで始まり、全編優しく明るい気分にしてくれるカンタータです。歌詞は詩篇115章から選ばれています。(2019/8/23)
Ich lasse dich nicht, du segnest mich denn
モテット《私はあなたを離しません》
創世記32章、夜を徹して神と決着のつかない取っ組み合いを続けるヤコブ。閉口した神が「もう行かないと」と言うのを遮って、この曲のタイトルで応えるのです。 実はヤコブは兄を騙して父から『神の祝福』を相続したものの、身の危険から母方の叔父の元に逃げ込んで20年、兄との和解に向かう前夜のことでした。このストーリーの詳細は創世記もしくは「Bible Learning - 神とレスリングをした男」その他、ネットにも色々載っていますのでご参考に。
長く叔父のヨハン・クリストフの作品とされていたモテットですが、近年J.S.バッハの作品として評価されるようになりました。2部合唱とフーガ、シンプルで、その美しさは類を見ないほどです。(2019/9/01)
第4回演奏会は無事終了しました。多数ご来場いただいた皆様、有り難うございます。
次回は2020年1月です。次のステップに向けて本ページにてご案内を続けますので、
引き続きどうぞよろしくお願いします。
今夜はゲネプロ。オケとの融合が進み、徐々に仕上がってきた感じがします。
明日、演奏会にご来場の皆様と一緒にこれらの音楽を楽しめれば、最高です!
いよいよ演奏会が近づいてきました。来週後半にはオケ合わせが始まります。
そして今回のプログラムは歌う我々にとっても大きな楽しみです。
テーマに沿った宗教画を眺めながら、ちょっと紹介してみましょう。
まずは待降節第1主日のためのカンタータ、
61番《来たれ、異邦人の救い主よ》と
36番《喜び高く舞い上がれ》の2曲を揃えました。
いずれも広く親しまれてきた名曲、
これでクリスマス気分のスイッチが入ります。
93番《ただ愛する神の御心のままに》は信仰について
教義問答しながら学び進み、砂上の楼閣が出て来たり、
ティベリアス湖での大漁の逸話を引き合いに、
最後まで信仰を貫くことを確認するバッハらしい
カンタータです。
そして今回最も注目していただけるのが、アルトのソロ・
カンタータ170番《満たされた安らぎ、愛おしい魂の歓びよ》
でしょう。
乱れた現世に切々と想いを歌い上げるこの曲は特に冒頭の
アリアが素晴らしく、あまたの名歌手が必ず挑んでいます。
さらに技巧的なレチタティーヴォとアリアへと続くこの曲を、他でもない、カウンターテナー・青木洋也先生の「生」で
聴けると言う機会となると滅多にありません。
17日午後、まだ余席はございますので、
どうぞ神田キリスト教会にお誘い合わせでお越しください。
2018-11-13:
いよいよ本番間近。ホームページからのチケット予約は締め切りました。残数は僅かですが当日券となります。
当日13時より受付で販売しますので、チケットお求めの方はなるべくお早めに会場にお越しください。
2018-10-01:
演奏会が近づいて来ましたので、この機会にオーケストラ・メンバーの皆さんを各々のプロフィールで紹介します。
この[ホーム]画面中程の楽器群別のタブからご覧いただけます。そのデータをアップしながら「何と贅沢な!」と
改めて感激。是非、演奏会にお越しいただく前にこの素晴らしい陣容に目を通しておいていただきたいです。
2018-09-01:
第4回演奏会のチラシが完成しました。11月17日、小会場ですので、
チケットはお早めに! Q?[contact]のページからお問い合わせください。
2018-07-01:
次回の第4回演奏会は2018年11月17日(土)です。待降節の季節に因んだカンタータ2曲を
目玉に据え、さらにアルトのソロ・カンタータでは白眉の名曲を青木先生の歌唱で
フィーチャーしました。以下が演目です。ご来場、お待ちしています。
カンタータ61番「来たれ、異邦人の救い主よ」Nun Komm, der Heiden Heiland
カンタータ93番「ただ愛する神の御心のままに」Wer nur den lieben Gott läßt walten
カンタータ170番「満たされた安らぎ、愛おしい魂の歓びよ」Vergnüte Ruh, beliebte Seelenlust
カンタータ36番「喜び高く舞い上がれ」Schwingt freudig euch empor
そしておまけに山本さん[Vc]のオフィシャル・ブログにも!
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